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『もえぎ草紙』

春爛漫。桜がきれいですね。昨日は、表紙に桜の絵がある『もえぎ草子』を読み終えました。清少納言の時代の一人の少女の物語、『枕草子』を題材にした創作児童文学です。貸してくれた友人が、「紙」について書かれ、今の大河ドラマにも通じる本だと教えてくれました。

 

なるほど。本のそで(表紙の内側に折り込まれたカバー)には、赤と白を重ねた「桜重ね」、緑と白を重ねた「卯の花重ね」などが描かれています。当時は貴重だった「紙」がポイントとなり話は進みます。

 

読書の醍醐味の一つは、様々な想像ができることですね。読み進めながら、平安時代に身を置いて、華やかな内裏の様子と、住む家もない貧しい物乞いの暮らしと、その差に思いを馳せる。碗と櫛のみを持って生き延びる毎日は、簡単に理解できるわけではないけれど、彼女が成長していく心の動きを肉付けていきます。

 

同じ境遇を体験していなくとも、人間は想像することができる。ただ、それは簡単なものではありません。自分に無いものは、どうやっても引っ張り出すことは不可能。そこが、本の出番だと思います。時代を超えて、距離を超えて、読書ならあらゆる場面に身を置くことができる。それが事実であっても、フィクションであっても。もちろん何を感じるかは人それぞれであっても。

 

『もえぎ草子』は、平安時代における紙について知ることができますが、文字や紙の役割、文学の可能性も書かれていて、私はとても好ましく思いました。

 

ーーー直接会っていなくても、伝えられる。(略)文字を介して、顔を合わせることも、話をすることもない清少納言の気持ちのはしを知ることができる。ーーー『もえぎ草子』久保田香里より

 

読書をしたところで、現実の状況は何も変わりませんが、様々な事柄や心情を知ることができる。それらが、誰かの気持ちを慮ったり、自分の気持ちを支えてくれることもあるかもしれません。


題材にしているということで、『枕草子』も本棚から引っ張り出してみました。我が家にあるのは、橋本治の『桃尻語訳 枕草子(上)』河出書房新社。

 

ナウいとか、ヤングは今は言わないよなぁと思いながらページをめくると、ありました。物乞いの様子や、残雪のこと等。『もえぎ草子』を読み終えたら、『枕草子』もめくってみると更に楽しむことができるかもしれません。

 

『枕草子』にある「うれしきもの」。「陸奥紙。普通の紙でもよいものを手に入れたとき」は、『もえぎ草子』の作者と同じで、私も大いに共感します。よい一筆箋や葉書を手に入れると嬉しいもので、清少納言と語り合えそうな気がします。

 

 


★私設図書館ビブリオAA、4月3日(水曜日)本日は開館日です。14時から18時まで。

 

★私設図書館ビブリオAA、次回の開館日は4月10日(水曜日)です。14時から18時まで。13時からは「作文マラソン」です。