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鳥の眼になる

 松山市にあるデパート「いよてつ高島屋」の屋上には観覧車があります。夜はライトアップされてとてもきれい。愛称は「くるりん」です。

 

 ふと思い立ち、数年ぶりに「くるりん」に乗りました。普通のゴンドラとシースルーゴンドラはお値段が違うのですが、もちろん私は普通のゴンドラへ。(足元が見えるなんて、とんでもない…)

 

 松山城の高さを新鮮に感じながら、伊予市の方向にも目を向けます。いつもとは違う位置に見える鉄塔が5本。高速道路も見えました。

 

 頂上が近づくにつれ、次第に恐怖もじわじわと。思わずうつろに下の方を眺めると、やはりそれはそれで恐ろしい。怖い怖いと言いながら、『真鍋博の鳥の眼』という本を思い出していました。

 愛媛県新居浜市旧別子山村で生まれた真鍋博は、星新一や筒井康隆の装丁や挿絵を多く手掛けました。新居浜市立図書館の移動図書館車には、真鍋博のイラストが使われています。 

 

 没後20年の昨年は、愛媛県内の3つの美術館が連携して、真鍋博の展覧会が開かれました。私は愛媛県立美術館で見た、『真鍋博の鳥の眼』が忘れられません。

 丸の内、霞が関、新宿、渋谷、札幌、もちろん、四国は高知や松山も。高度成長期の都市の鳥観図は圧倒されるほど細かいものでした。欲しい欲しいと思いながら値段で思いとどまりましたが、買っておけばよかったと今では思います。

 ゴンドラの小さな揺れに怯えながら、自分は鳥の眼を体験していると、自己暗示をかけておりました。


(写真は最も高い場所ではなく、割と低い位置で撮影したゴンドラからの光景です。怖くて気が回りませんでした…)

 真鍋博著『新装版 真鍋博の鳥の眼 タイムトリップ日本60's』毎日新聞社発行 2019


★本日10月3日(日曜日)は14時から19時まで開館しています。13時からは「ひたすら読書会」。

次回の開館日は、10月6日(水曜日)です。