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三津を歩く 

 はね鯛を取て押へて沖膾 子規
 少し前のことになりますが、松山市三津にある旧鈴木邸の主・岡崎さんに、地元三津を案内してもらいました。

 国の登録有形文化財となった旧鈴木邸を出発し、最初に立ち寄ったのは大原基戎(きじゅう)の句碑です。
 
 大原基戎は、明治13年、全国でも3番目に古い月刊俳誌「真砂の志良辺(しらべ)」を創刊しました。正岡子規が唯一俳句の教えを乞うた人で、いわば子規の俳句の始まりです。

 

 帰宅後、雑誌『食の文学館』第7号(特集「伊代路文学と味覚の旅」平成元年発行)に掲載されていた、俳文学者山下一海の「三津浜の沖膾 正岡式の故郷吟」を読んでみます。子規が明治20年に大原基戎を訪ねたことや、明治25年高浜虚子・河東碧梧桐・新海非風と「三津浜いけす」で行った句会の話が紹介されています。

 

 はね鯛を取て押へて沖膾 子規
 ちなみに、その句会の題の一つが「沖膾」。沖でとった魚をそのまま船の上で膾にして食べることを言うそうです。

 以前から訪れることはありましたし、断片的な知識としては知っていましたが、地元に住む岡崎さんのガイドを聞きながら歩くと、この地が文学や歴史、俳句や建築など、大変魅力にあふれた場所であることがわかります。

 

 また、さらに旅を読書で補うことも、私には楽しい作業です。本で得た知識をもとに、実際にその地を訪ねてみたり、見学した内容を本でたどってみたり、どちらも知識と経験が重なり深く印象に残りますね。夏の三津探訪、とても楽しい時間でした。


★次回のビブリオAA開館日は、8月18日水曜日14時からです。