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家庭の味を思う

 「素麺戦隊ゴシキメン」。飛び込んできた新聞の全面広告に思わず笑ってしまいました。「ゴシキメン」は、愛媛の郷土料理「五色そうめん」からきています。その名のとおり五つの色のめんを使うのですが、着色はいずれも天然素材で、赤の梅肉、緑の抹茶、黄色の卵黄、茶のそば粉と聞いたことがあります。

 そんな五色そうめんを戦隊化した、気になる素麺戦隊の色はこちら。ゴシキマンブラウン(もち麦)・イエロー(みかん)・レッド(梅)・グリーン(抹茶)・ホワイト(白)。リーダーは、ゴシキマンと付くブラウンでしょうか。私としては圧倒的な量を占めるホワイトであってほしい。白の中に混じる少量の赤・緑・黄・茶は、見た目にもとてもきれいです。

 子供の頃は夏休みの昼食といえば素麺でした。氷が浮かぶ器の中、色の付いた麺を兄弟で奪いながら食べたことを思い出します。錦糸卵やネギのほかにも、細長く刻んだ赤い蒲鉾を散らしましたが、これは私が生まれ育った八幡浜ならではかもしれません。素麺用に使っていた大小のガラスの器まで目に浮かびました。懐かしい夏の記憶です。

 

 ストレートや濃縮タイプなど、今なら手軽に使える「めんつゆ」がありますが、我が家の素麺のつけ汁は干しシイタケと小さなエビから取っていました。台所の片隅に、いつもシイタケを浸したプラスチックの容器があったような気がします。少し甘めの素朴な優しい味でした。一方、鯛が手に入った時の素麺はご馳走に昇格します。鯛で作るつけ汁に、祖父母から子どもの私たちまで舌鼓を打ちました。

 

 麺類のお汁といえば、伊予市に引っ越した後に旧中山町のお祭りでうどんを食べました。お出汁に入っていたのは大豆。「お豆さんが入ってる!」以外な食材に驚きながら、子どもたちと最後まで味わい食べきりました。伊予市のお隣にある内子町小田の名物たらいうどんの出汁も、大豆と干しシイタケで作られているようです。また中山町のうどんを食べたいと思うのですが、コロナが始まりお祭りに行くことはかないません。

 本来なら誰はばかることなく、遠くに住む家族が一同に集い、その家の味を楽しむゴールデンウィーク。懐かしい家庭の味は、家族との大切な日常です。何気ない毎日が心にあること。当たり前に感じていたそんな一コマが、早く戻るようにと祈るばかりです