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季節の移ろいを愛おしむ

 自宅の庭の草を引いていると、ニゲラが大きく生長していることに気が付きました。和名でクロタネソウと呼ばれるこの植物は、外来種ですが江戸時代にはすでに渡来していたとか。青い花はとても繊細で可愛らしく、こぼれ種からの発芽を毎年心待ちにしています。気温も上がり、背丈もたくましく伸びてきました。
 
 町では街路樹のハナミズキが咲き、野ではレンゲソウのじゅうたんが広がっています。今読んでいる『日本の花を愛おしむ』の帯には、「あらためて『花の国、日本』を実感」と書かれていました。写真ではなく絵で描かれている花たちの美しさに、ページをめくるたびに息をのみます。季節を教えてくれる草花の本当に豊かなこと。

 春夏秋冬と日本では四季に分かれていますが、その中でも植物は実に細かく、発芽する時季、つぼみを膨らませるタイミングを忘れることはありません。忙しさに流れていく毎日の中で、どれだけそれに気付いているか、思わず日々を省みました。

 

 植物が変化する時といえば、二十四節気と七十二候を連想します。今は「穀雨」の初候「葭始生」。葦が芽を吹き始めます。明日25日からは次候「霜止出苗」。そして、5月5日からは「立夏」、夏が立つ日となります。数字ではなく言葉で知る暦も味わい深いですね。自然の一部である自分を深く感じます。

 ネットやSNSを楽しむことも程々に、できれば季節の移ろいを、「七十二候」を、五感で感じ取れたらと思います。先人たちの観察眼を敬いながら、同時に自分の感覚も研ぎ澄ませてみたい。


 この春ニゲラが咲き始めるのは、何日後になるのでしょうか。何でもない毎日が、少しだけ心待ちになるような気がします。隣町に広がる麦畑の秋も近づいてきました。ビブリオAAの花壇にあるスイトピーの観察も欠かせません。できることは豊富にあります。気持ちも豊かに、にっこりと。