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田の神さま

 4月8日の愛媛新聞「季のうた」に、こちらの俳句が紹介されていました。

「天頭花(てんとばな)蕗に包みて貰ひけり」
柏原眠雨(かしわばらみんう)

 天頭花とは、卯月8日に山から摘んだ花を高い棒の先に結び、庭先などに立てる風習だそうで、田の神さまを山から迎える豊作祈願が始まりだと書かれています。

 田の神さまと言えば、伊予市には谷上山(たがみさん)と呼ばれる標高456mの山があります。山頂には夜光井(やこうのいど)と呼ばれる小さな池があり、はるか昔、愛比売命(えひめのみこと)が生まれました。五穀豊穣の神であるこの愛比売命を祭り、「田神さん」と呼ぶようになったと言われています。(『伊予市探訪ー歴史文化の里めぐりー』伊予市歴史文化の会編より)

 桜が終わり、若葉が萌え出づるという表現がぴったりの季節となりました。勢いを感じる新芽や若葉を見ていると、こちらまで元気が出てくるような気がします。田の神さま、田神さんへ、これから始まる米作りに向けて祈ります。

 変わらぬ自然からすると、収まる気配のないコロナ禍も人間が勝手に騒いでいるだけかもしれません。ですが、何気ない暮らしの有難さを、今一度感謝したいような春の日です。生命の息吹感じる卯月に、心に残った一句でした。(写真は谷上山から伊予市を望んだ一枚。)