大洲の街並みを探訪し、最後に訪れた「村上邸」の玄関に入るとすぐ、興味をそそる本棚が目に飛び込んできた。
棚に置かれている本達は、単なる寄せ集めではなく、どことなくテーマ性が感じられる。
上段には、甲斐みのりさんの随筆集、植物という切り口での本が、そして下段には、言葉に関する辞典・言葉集めの類の本が立ち並んでいる。
僕は、このような特徴ある、そう、選んだ人の意図なり感性なりが読み取れるような本が並んでいる棚にものすごく好感を抱いてしまうのだ。
今回大洲を訪れた本来の目的が「古民家巡り」だということを、不覚にも、一瞬忘れさせられてしまった。
「センス良いよなぁ、このチョイス」と感心し、店のオーナーさんに声をかけようと思ったが、よくよく本棚を見ると、どうやら松山で古書店を営んでおられる「本の轍」さんがプロデュースされているようだ。
「なるほどな、さすがやな」
早合点して、オーナーさんに声をかけなくて良かった。いや、声をかけても結果は同じで、「良い本棚を作られてるよね」といった話に落ち着くだけだろう。
本は単品でも価値あるものだが、集合体としてうまく組み合わせれば、更に価値を倍増させるものだなぁとしみじみと感じさせられた。
その集合体に余計なキャプションを付け加える必要はなく、うまく配置すればその集合体は、観る人にちゃんとメッセージを発信するものなのだ。
画廊・雑貨店・カフェ・古民家という場所とは直接結びつかないセレクションと言えなくもないが、不思議とここを訪れる人の感性と調和しているように思えてしまう。このような形での本との出会いって、魅力的だよな。
旅の想い出の一つになっちゃうよな、
このようなブックスペースが増えていくことを期待して止まない。
(いせきこたろう)
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