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教室に並んだ背表紙

 『教室に並んだ背表紙』とは…。ある中学校の図書室を舞台に、読書との出会いで変わっていく少女たちの物語。主人公がそれぞれ異なる6つの物語の連作短編。群像劇ともなっています。

 恋愛ものや部活もの、友情もの、そんなキラキラした物語は読みたくない。「自分たちは詰んでいる」。主人公たちは窮屈さに息を詰まらせ、先の見えない日々を送っています。

 中でも読書感想文の章が好きです。読書感想文を書くことが苦手な主人公は、ある日他の子が書いて捨てた未提出の読書感想文を手に入れます。そしてそれを写すことを思いつくのですが、タイトルが書かれておらず、5冊ある課題図書のうちどの本を書いたものかわかりません。仕方なく彼女は図書室へ。そして学校司書さんの巧みな誘導により彼女は1冊の本を読むことになり…。

 学校司書との出会い、物語との出会いにより、自分の中にある言葉にできない感情に、彼女たちは気が付いていきます。私に気づいて。私の場所をください。寂しかった。私を知ってほしい。否定されたくない。中学生の心が叫んでいるのです。そして物語はそれを受け止め、ともに歩んでいく力を持つのです。

 最後まで読むとわかる一つのしかけも面白く、この本が伝えたいことがより深く伝わってきます。

未来へと受け継がれていく“しおり”。寂しくて、迷ってしまったときは“物語”を読んで。読み始めは苦しいものの、次第に力強く生きる力が沁みてくる1冊です。 


『教室に並んだ背表紙』相沢沙呼 集英社 9784087716948