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書庫に生まれ変わった電話ボックス

 携帯電話の普及により、数を減らした電話ボックス。昭和生まれの私にはもちろん馴染みがありますが、小学生の娘は見たことがなく、問いかけると逆に「どこにあるの?」と返してきます。店先にあった公衆電話も減りましたし、今では電話ボックスを見つけることも難しいのかもしれません。

 昨年11月末、愛媛新聞でこんな見出しを見つけました。「電話ボックス書庫に変身 松山市図書館、独の贈り物活用」1989年、姉妹都市ドイツ・フライブルグ市から松山市に贈られた電話ボックス。市立中央図書館のある施設の広場でずっと使われていましたが、昨年11月、図書館の除籍本リサイクルボックスとして改装し再利用を始めたそうです。

 
 実際に訪ねてみると黄色が何とも愛らしく、周囲を明るくさせています。電話ボックスですから、人がひとり入るだけの小さな空間のに、図書館の除籍本がずらりと並べられています。今まで広いスペースに並んだ除籍本ばかり見ていましたが、こんな小さな空間での本選びは、何だか逆にワクワクするような楽しみを感じます。列ができるほどではないけれど、ひっきりなしに人が訪れていました。読書週間などの期限に限らず、図書館が開館している日は常設されていることもいいですね。

 本来のお役目を終えた電話ボックスが、このような形で生まれ変わる。電話ボックスを知らない娘にとっては、本の詰まった秘密の小部屋かもしれません。並べられた除籍本を一緒に選びながら、小学校で習ったと、フライグルグ市以外の友好都市を教えてくれました。電話ボックスのお役目は終えたかもしれないけれど、友好都市を伝えるお役目は十分に果たしながら、リサイクルボックスは現在も愛されているようです。