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多世代交流拠点という場のブックスペース

 休日にかき集めた膨大な量のパンフレット類の整理に追われていた。半ば機械的ともいえるタイトル、発行者等の台帳への入力作業。単に入力するだけじゃ退屈してしまうので、見出し等に気になる言葉を見つけたときには、手を休め、該当記事を斜め読みすることにしている。

 

 3月上旬に東温市で収集した資料を整理中、ふと「駅と珈琲」という文字に目が留まった。「駅」と「珈琲」という余り紐づけられることがないであろう言葉の取り合わせ。記事を読んでみると、「駅」の近くの「カフェ」ということなのだが、それだけでなく古書も販売しているらしい。無性に気になるではないか。よし、休日を利用して訪ねてみよう。

 

 ということで、休日の火曜日に東温市へと足を運んでみた。しかし、開店日、営業時間などの基本的なデータを押さえずして家を飛び出すのが私の悪い癖。

 この悪い癖のせいもあって、この日は散々だった。敢えて月曜日を外したのに、東温市立図書館も、東温市歴史民俗資料館も休み。以前から、いつかは訪問しようと考えていたネジマキカフェも、カフェ・おひさんもお休み。

 肝心要の「駅と珈琲」についても、「あれ?店の正式名称って何だったっけ?」「どこにあったんだっけ?『駅と珈琲』っちゅうぐらいやけん、横河原駅の近くやったわいね?」とド忘れしてしまう始末。自分の注意散漫さに呆れ果ててしまう。

 

 とにかく横河原駅の周辺を歩けばどうにかなるだろうと、駅の東側の道をぶらついてみると、ふと「横河原ぷらっとHOME」という看板が目についた。「多世代交流拠点」とある。気軽に寄れそうだし、ドリップコーヒーも飲めそうだ。目的の「駅と珈琲」ではないが、駅構内施設っぽい名前だし、まずはここに立ち寄ってみることにした。

 店舗内に入ってみると、正面に本棚が広がっていた。

ブックスペースを訪ねることも旅の目的の一つにしている私にとっては、思いがけない巡り会いだ。

 

 一人のお客さんと店主が語り合っていた。コーヒーを注文し、店主がドリップしている間、そのお客さんとお話しをする。近隣の飲食店のこと、東温市内のカフェをめぐって散々だったこと。その話の流れの中で、

「あ、そうそう!この辺に古本屋も兼ねたカフェありますよね?ご存じなら教えてください。」

と持ち掛けると、

「あー。そのカフェなら、この人がやりよらい」

とコーヒーを淹れている店主を指差した。

 

 ああ、何たる偶然。まあ、ちゃんとFacebook等で下調べしておけば必然だったに違いないが、セレンディピティをいう言葉が脳内を突き抜けていくほどの歓迎すべき、私にとっては偶然であった。

 

 何か、お二人で立て込んだお話をされているようなので、軽めの質問だけさせてもらい、あとは本棚を物色させてもらう。棚にならぶ本のジャンルは多種多様。料理やガーデニング、まぢづくり、絵本、小説、スピリチュアル系、俳句…。個人のセレクションとは思えない。聞いてみると、ここに集まる方々が持ち寄ったものらしい。なるほど、さすが「多世代交流拠点」を謳ってるだけのことはある。納得できるラインナップである。

 蔵書量はざっと見、300冊前後といったところか。余裕を持たせた棚は、一部のテーマについては面陳列していて、アクセントが効いている。私の琴線を掻き鳴らすいうなご当地本も、僅かだが所蔵されている。

 

 また、今度ゆっくりと本を眺めに来よう。

 店主とじっくりとお話させていただこう。

 次回こそ、ちゃんと「駅と珈琲」の店舗にも立ち寄らねば…。

 

(いせきこたろう)

 

●横河原ぷらっとhome

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●駅と珈琲

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