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伝えたい思い

 『青い鳥』重松清著 新潮社
 人に何かを伝えることは難しい。言葉を選んだり、文脈を考えたり、しゃべり方を苦慮したり。

 この小説は9編からなる連作短編集。中学校の非常勤講師、村内先生には吃音がある。受け持つ授業は国語だが、うまくしゃべることができない。うまくはしゃべれないけれど、先生は一生懸命しゃべる。うまくはしゃべれないから、本当に大切なことだけをしゃべる。うまくはしゃべれないけれど、村内先生が言いたいことは、ちゃんと生徒に伝わっていく。
 答えのない問題に直面している中学生たち。村内先生は、その子を見る。体裁でもなく、薄っぺらい形だけの決まりでもない、そこにいるその生徒を村内先生は見ている。そしてその子に語りかける。顔を赤くして一生懸命に。
 「伝えること」を改めて考えていた私にとって、村内先生の言葉は心に残る。言葉を伝える。想いを伝える。伝える先に願うもの。繋がっているそれらを大切にしたい1冊だった。