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七味五悦三会

 昨年(2020年)12月23日、愛媛新聞で紙上開催された「ふるさと大学『伊予塾』」第63回講座において、鴻上尚史さんが「七味五悦三会」について書いていた。江戸時代の庶民は除夜の鐘を聞きながら、この七味五悦三会(ひちみごえつさんえ)について家族で語りあったという。今年初めて食べた七つの美味しいもの、今年初めて経験した五つの楽しかったこと、今年初めて会った三人のうれしかった人。これが全部揃えば、一年間良い年だったと喜んだという。鴻上さんは故・杉浦日向子さん(江戸風俗研究家)から教えてもらったと書かれていた。
 この「七味五悦三会」で一年を振り返ろうとも、出来事や現実は何も変わらない。辛い事実が消えるわけではないし、悩みから放たれるわけでもない。しかし、間違いなくその年の良い思い出は増えるだろう。「初めて」が増えることは、正月を迎え年をとる楽しみとなる。どこに焦点を当てるか、自分が何を大切にしていくか、幸不幸も捉え方で変化することを考えれば、つらい出来事も良い出会いに転じるかもしれない。一年を気持ちよく納める。年末に、そしてこのコロナ禍に、大変励みになる寄稿だと思った。
 ところが、2020年の私の「七味五悦三会」は何だったかと振り返るも、漠然とするばかりで即座に思い浮かばない。自分の活動も回数を重ねてきている。出来事ならばもちろん多く挙げられるし、一つ一つを疎かにしているわけでもない。だが、その都度の感動は常に意識しておいたほうがいい。年末に振り返る前に、今月の一味一悦一会を月末に振り返ってみようか。日記代わりにつけている1冊の手帳には、日々の喜びや驚き、感謝を残すようにはしているが、メモ書きや張り付ける程度にとどまっている。今年はこのブログを通じて、日々の出会いを書き留め、年末の振り返りを楽しみとしたい。日々の観察を文章に残すという悦びが、「五悦」の一つとなりますように。